アイディアスタイルの中で、2019年もっとも印象に残った「Best of 2019」第10位~1位までを毎日配信していきます!!セレクトしたのは、私マーケティング部の玉井です。果たしてみなさんの印象に残った記事はランクインしているのか…?!
みなさまこんにちは、初心者ライダー 兼 マーケティング部 広報の玉井です。
今日のお話は、この1枚の招待状からはじまります。
KEIO TECHNO-MALL 2019という、科学技術展への招待状がきたのです。
KEIO TECHNO-MALLとは、慶應義塾先端科学技術研究センターが主催する、今回で20回目を迎える歴史あるエキシビジョン。
日頃の理工学研究の成果を実物展示やデモンストレーションし、最先端の技術を体感してもらおうという展示会です。
なぜそんな招待状をいただけたのかというと…!
昨年から慶應義塾大学の山中先生のチームに、研究用の車両としてアディバの電動バイク「VX-1」を提供しているんです!
果たして電動バイクを使って、どんな研究が行われているのでしょうか……。見に行ってみたいと思います!!
会場の東京国際フォーラムに到着!
赤坂からも近い、有楽町駅から徒歩1分の場所にある東京国際フォーラムが今回の会場です。
受付を済ませ、会場へ向かうと……
ずらっと並んだブースとパネル、およそ100の研究の成果が発表されています!
さっそく山中先生のブースへ!
ブースには一際目立つ赤いVX-1が展示されていたので、すぐに見つけることができました!
では山中先生がどんな研究をされているのか、さっそく見てみましょう。ブースには、研究内容が貼られていました。
「協調制御による交通効率向上を図るネットワークコントロール型自動運転プラットフォーム」
タイトルからつまずきました(笑)
自動運転を研究されているということはかろうじて分かりましたが、何度読んでも私の頭では全く理解できません…。
山中先生を発見したので、直接お伺いしたいと思います。
山中先生、教えてください!!
玉井:すみません、私には理解できず……山中先生の研究内容をお教えいただけないでしょうか。
山中先生(以下山中):分かりました。まず、サイバーフィジカルについて説明しましょう。「サイバー」というのはコンピュータ上のデータネットワークのこと。「フィジカル」とは実物のことです。
一言で言えば「すべての実物をネットワークで再現しそこから制御する」ということ。
例えば、フィジカル空間にある実物の車に対して、エージェントという名の代理人をサイバー空間に作るんです。全てのエージェントの動きを収集し解析することによって、フィジカル空間の状況をサイバー空間で把握することができます。
さらに、複数のエージェント間で、調整、協調をしてその結果をもとに、フィジカル空間に対して最適な制御をフィードバックすることができるんです。
これがサイバーフィジカルシステムの考え方です。
玉井:現実世界が、コンピューター上で再現されちゃうんですね!
山中:なぜこんなことをしているかというと、自動運転の研究のためです。そもそも自動運転には2種類あります。
1つ目は、スタンドアローンアプローチという方法。自動車にカメラやセンサーを付けて、衝突の可能性を検出をして回避しています。これは、人間が運転している車との混在を許容します。
そして2つ目は、インターネットへ常時接続するネットワークコネクトカーを使う方法です。先ほど話したサイバーフィジカルによって、サイバー上で自動車の動きを管理します。サイバー上で「止まれ」と指示をしたら、現実世界の自動車が止まる。
玉井:コネクティッドカーという言葉は最近よく聞きますが、そういう活用法があるんですね!
山中:サイバーフィジカルを使った自動運転のメリットは、ソーシャルウェルフェアです。
玉井:その言葉は聞いたことがありません……。
山中:ソーシャルウェルフェアを日本語にすると最大多数の最大幸福。交差点で合流するときに、単純に交互ではなく、交差点を通過する車の待ち時間を合計で最小にするようなアプローチです。
一台の自動車だけでなく、各車の動きから未来の状況を予測し、現実世界を制御することで、世の中全体の交通効率を向上させるんです。
例えば、脇道から幹線道路に合流するような状況で、どのタイミングで合流させるか。
普通は幹線道路が優先なので、幹線道路の自動車が途切れた時にしか合流できませんが、各車の動きや時間を解析すると、幹線道路の自動車を減速させてでも合流させた方がみんなの遅延時間の合計が短くなることがある。
さらに、次の交差点の信号機の赤のタイミングとか、道の込み具合を考慮して、順番もスピードも制御します。
全体でベストな状態にする、というのがソーシャルウェルフェアの考えです。
玉井:なるほど!社会全体の渋滞時間が短くできれば、エネルギー効率も良くなって環境にも優しいですね!
さらに20年後を見越した研究も!
山中:さらにいま取り組んでいるのが、知の交換です。
元々人間は、こうやってお会いした時に経験知や学習知を他人と交換していてそれによって知識が増えているんだけど、この情報交換をサイバー上で行うんです。サイバーフィジカルでは、サイバー上のエージェントが、必要なエージェントと、必要な時間に知を交換します。
自動運転では、例えばいま走っている道で、路肩に止まっている自動車があるとか、ここは渋滞しているとかの情報を瞬時に交換することができて、それによって初めて行った土地でもベテランのタクシードライバー並みの知識で走れるということです。
これが20年くらい後にキーになる技術で、リアルではない、サイバー上のエージェント(コンピュータ)が自分で情報を得て学習し成長し始めるんです。その結果で、リアル、つまり自分たちが制御されるのです。人工知能が人間の知性を超える、シンギュラリティと呼ばれる時代が来ます。
慶應でも、ディジタルツインネットワークと言って、分散、自己組織、自己学習のエージェントを研究しています。
玉井:20年先を見越しての研究なんですね。まったく知らない私でも分かるようなご説明に感激です。
山中先生、ありがとうございました!
最先端の科学技術という、全く未知の領域に少し足を踏み入れられたことがとても嬉しかったです。
また社会に役立つ素晴らしい研究が、アディバやアイディアの電動バイクで見られるかもと思うと、さらにワクワクします!
みなさまもぜひご期待くださいね。