プジョーのラインナップの中でも、老若男女のユーザー層が一番広いのがジャンゴ。レトロテイストで親しみやすいデザインはもちろん、快適な乗り心地が人気の理由です。今回はジャンゴの快適性のかなめである、シートの特長をご紹介します。
「猫足(ねこあし)」って知っていますか?
突然ですがみなさん、「猫足」という言葉をご存知でしょうか?四輪の世界でフランス車は、クッション性の良い足回りで、猫のようにしなやかに走ることから「猫足」と表現される事が多いのです。そこで「フランス車=猫足」という表現の起源を探ってみると、みなさん一度は見かけたことがあるであろう一台のクルマにたどり着きます。
1948年から1990年まで42年間も生産された大ヒットモデル、「シトロエン 2CV」です。
「荒れた農道を走行しても籠の中の卵が割れない」ことを目指して設計された「2CV」の乗り心地は本当にふわふわで、私も初めて乗ったときにはダンパーが抜けているのかと思ったほどです。
「柔らかいけど、奥でしっかり踏ん張る」というフランス車特有の乗り味は、ボディやサスペンションの設計によるところも多いですが、シートも大きな要因だと思います。シトロエンやルノーなど、私がこれまでに乗ったことのあるフランス車のシートはだいたい同じ印象でした。
猫足と言えば、プジョー
最新モデル「508SW」でも、電子制御アクティブサスペンションと様々な調整機構を備えたシートによる快適性が、好評価のポイントとなっているようです。
バイクも猫足?
では、バイクの世界ではどうなのかというと、やはりこちらも「猫足」でした。プジョーのラインナップの中でも特に人気のジャンゴに乗ってみると、他車とは違う、おだやかでゆったりとした乗り心地に気が付くはずです。
ジャンゴの快適性のヒミツがシート。ライダー側とタンデムライダー側を分割したダブルシートとすることで、ワンピースのシートよりも複雑な形状とすることができ、ライダーを包み込むようなホールド感を実現しています。こちらは「ジャンゴ アリュール」のタン仕上げのシートです。
また、通常スクーターのシートは、2~3枚の表皮で構成されることが多いですが、ジャンゴのシートは、多くの表皮が複雑に組み合わせられています。デザインのためだけではなく、シートの部位ごとの荷重のかかり方を計算して設計されているのだと思います。こちらは色違いで「ジャンゴ(マッドブラック)」のブラウンカラーのシート。 切り替え部分のダブルステッチもアクセントとして効いています。
そして「ジャンゴ エバージョン」や「ジャンゴ スポーツ」では、縞模様のようにふくらみを持たせた「タックロール」加工を施し、さらに柔らかでフィット感のある座り心地としています。
これだけ凝ったシートは、小型スクーターのカテゴリーではあまり見ることができないと思います。プジョーが、なぜここまでシートにこだわりを持っているのか。その理由はやはり「はじまりの一台」にありました。
はじまりの一台
プジョー最初のスクーターが、1953年にデビューした「S55」。それぞれにスプリングを取り付けた、前後独立シートが特徴です。
この非常に凝った設計は、「大人2人が快適に移動できるように」というコンセプトを実現するためのもの。当時のポスターを見ると、快適さと楽しさが伝わってきます。
こんな歴史を知ってからバイクに乗ると、ちょっと楽しくなりますよね。暑さも穏やかになってきたので、週末は快適シートのジャンゴでタンデムツーリングはいかがでしょうか?