世界最古のバイクブランドから誕生した新進気鋭
プジョーの二輪部門の名称が「プジョースクーターズ」から「プジョーモトシクル」へと、ブランド名を変更した。
10月上旬に開かれたパリ・モーターショーにて発表されたが、チョット待て…、プジョーといえばフランスの自動車メーカー。オートバイをつくっていたなんて知らなかった、そんな人も少なくないだろう。
プジョー最初のモーターサイクルは120年前、1898年の「第1回パリモーターショー」で発表されたから、何を隠そう、現存するモーターサイクルブランドの中では、世界最古ということになる。
1907年のマン島ツーリストトロフィー2気筒クラスで優勝したノートンはプジョー製のエンジンを載せていたし、1934年には「P515グランスポーツ500cc」がボルドール耐久レースで記録を樹立し、ツール・ド・フランスでも勝利。初のスクーターは1953年の『S55』で、パネル化されたボディやトランクを前面に備え、人気を博したのだった。
そうした伝統を受け継ぐモデルが『ジャンゴ125』で、豊麗なボディラインは1950年代のスクーターをモチーフとしているが、今回乗った『スピードファイト125』は、ジャンゴのようなクラシカルなスタイルではなく、スポーティ路線まっしぐらの新進気鋭だ。
エキサイティングなスポーツスクーター、それが「スピードファイト」
プジョー120年の歴史では新進気鋭だが、スピードファイトももう20年以上の歴史を持つ。初代は2ストロークエンジンを積んで1997年にデビューし、フランス製ならではの先鋭的なスタイルで欧州市場にて人気を集めた。現行モデルは第四世代で、エンジンは4スト化され、吸気系もインジェクション式になっている。
実車を見ると、まずフロントマスクにインパクトがありすぎて目が離せない。上級仕様の「R-CUP」の場合、ヘッドライトまわりが赤く縁取られ、まるで歌舞伎役者が見栄を切っているかのようだ。フランスは日本ツウが多い国だが、デザイナーもまた日本の伝統文化が好きなのかもしれない。日本製スーパースポーツのようにも見えるし、フランスから見た日本のスタイルのように感じてならない。聞けば、インスパイアを受けたのはプジョーのレーシングカー「308TCR」とのことだが、とにかく斬新。一歩先を行くスタイリッシュさが、そこにはある。
LED式のデュアルヘッドライトをはじめ、エアダクトのあるボディやテールウイングの装備など、車体はレーシングイメージであふれかえっている。R-CUPは、さらにリアシートをカバーして、シングルシート風に見せているから、なおさらレーシングイメージを強調。シートカバーは簡単に脱着でき、スタンダード同様にパッセンジャー用のフットペグも標準装備するから2人乗り仕様にもすぐできる。
ちなみにサイドスタンドはなく、センタースタンドのみ装備。ウイングは頑丈に取り付けられているので、これをグラブバーにすれば容易にスタンドが立てられる。
足まわりは前後13インチで、リヤホイールは片持ち式。リアサスペンションはリザーバータンク付きで、コシがあってハードに走っても踏ん張りが効く。ブレーキも前後ディスク式とし、レバーを握ればフロントとリヤが連動し、好バランスで制動力を発揮する。前輪ブレーキは2ピストンキャリパー&ウェーブディスクの組み合わせで、ストッピングパワーもコントロール性も申し分ない。
水冷SOHC2バルブエンジンも元気溌剌とした味付けで、ドカンとパワーが出ることはないもののレスポンスも加速力も充分だ。
スマホを手放せない若者のためにも!
機能的だと感心したのは、USB電源だけでなくスマートフォンのためのマウントサポートを予め備えていること。スマホのサイズや縦置き、横置きは問わずフレキシブルに固定でき、充電ケーブルもUSBポートを備えるグローブボックスのフタに挟まれないよう逃げの隙間をつくって、スッキリとした取り回しを可能としているから舌を巻く。なお、電源ソケットはメーター下のボックス内だけでなく、シート下のトランクにも備わっている。
欧州スクーターはオシャレなスタイリッシュさで勝負しがちだが、『スピードファイト125』はそれに加えて、都会を軽快に駆け抜けるスポーティな走りと、スマホなど先進的なアイテムが手放せない若者に向けた使い勝手の良い装備が自慢。「もう少し落ち着いた雰囲気を…」というのであれば、R-CUPではないスタンダード『スピードファイト125』の過激すぎない「フラット6レッド」「ピンクゴールド」「ディープオーシャンブルー」のどれかを選べばいい。
いずれにせよ、人とはかなり違うスクーターと言え、洋服や時計、ワインのように毎日の足もフランスブランドをチョイスしてみれば、きっと通勤や休日の移動が面白くなるだろう。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。 |
《青木タカオ》
引用元:
https://response.jp/article/2018/11/05/315802.html
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