排気量125cc以下である原付2種、いわゆる「原2」と呼ばれるスクーターは、生活の足としても便利な乗り物であり、都内最速、通勤快速と例えられるくらいその機動力の高さに注目が集まっている。
が、それとはちょっと様子が違った原2スクーターがある。イタリアやフランスといったヨーロッパメーカーのスクーターたちだ。
クルマよりコンパクトで気軽に扱える大衆の足
モッズ御用達のランブレッタに、探偵物語で工藤ちゃんが乗り回していたベスパ。さらにはプジョーにもスクーターがあることをご存知だろうか? これらのヨーロピアンスクーターは、生粋のバイク乗りというよりも、ファッションやカルチャーといった、その背景を一緒に楽しみたい人たちが選んでいるイメージが強い。便利な道具、というよりもライフスタイルに寄り添った、趣味性が高い、さらにはファッションの一部として楽しんでいるのだ。
そもそもスクーターは“クルマよりコンパクトで気軽に扱える大衆の足”として作られた乗り物だ。スクーターの現在のスタイルを決定付けたのは、1946年に登場したイタリアのベスパと言われており、トランクのような積載スペースを持ち、革靴が痛むシフトペダルをなくし、足を揃えて乗れるフットボードを設置。さらには風や泥を避けるボディーカバーがありと、バイクながらもクルマのように洋服の汚れを気にせずに乗ることができる乗り物として開発されたのだ。
ファッションアイコンとしてのスクーター
その後、ただの便利な乗り物としてではなく、ローマの休日で映画に登場し、60年代まで続いた、モッズのアイコンのひとつとして、ファッションに敏感ないわゆる当時のインフルエンサー的な存在の人々に愛され、ファッションの一部としての地位も確率したのだ。
そんな背景を持つヘリテージ感漂うヨーロピアンスクーターはグラマラスなスタイリングで見た目もオシャレ。街を走っていると「かわいいばいくー」と女の子たちから注目を浴びることもしばしば。
普段着でオシャレに乗りたくなる、というよりも、着るものを選ばずに乗れてしまうのが魅力的なのだ。スーツで乗れるのはもちろんのこと、大げさにいってしまえば、ドレスにヒールでも乗ることができてしまう(もちろん推奨はできないが……)。とはいえ海外では、タイトなワンピース姿で、街を颯爽と流している広告が使われていたりもする。
オシャレもバイクも一緒に楽しみたいという今、注目すべき代表的モデルを紹介しよう。
■ネオレトロなスタイリングが光る…プジョー ジャンゴ125 エバージョンABS(本体価格37万440円・税込み)
フランスのプジョーといえば、クルマのイメージが強いが、実は120年の歴史を持つ現存する最古のモーターサイクルメーカーだ。この『ジャンゴ』は、1953年にプジョー初のスクーターとして登場した「S55」にインスパイアを受け復刻されたモデルで、ツートンカラーのネオレトロなスタイリングが他にはなく個性が際立っている。
もともと「S55」は4輪の「プジョー203」を彷彿とさせるデザインが採用されており、ジャンゴにもその雰囲気が継承されている。50年代のクルマそのものを匂わせる雰囲気が上品かつおしゃれだ。フランス車らしく、トレンチコートがよく似合いそうな雰囲気でもある。
空冷の単気筒エンジンは穏やかでいて優しい乗り心地だ。クイックさはないが、それがかえって心地よい。ウインドに映る自分を眺めながら走りたくなってしまうかも。
ショートスクリーン(2万9800円)とフロントキャリア(2万9800円)はオプションとなる。
■イタリアンスクーターの代名詞…ベスパ プリマベーラ125 ABS(本体価格45万9000円・税込み)
そのぷっくりとしながらもシャープにとがるテールラインが特徴的なベスパ。そのテールラインがスズメバチに似ていることから、ラテン語でスズメバチを意味するベスパと名付けられたのだが、他にもスチールモノコックボディや片持フロントサスペンションといいた独自の機構が特徴となっている、まさしくイタリアンスクーターの代名詞。
『プリマベーラ』はクラシカルなベスパらしいデザイン要素を継承しつつも、モダンに仕上げられた、ベスパの代表的なモデルとなる。クラシカルな装いながらも、空冷単気筒SOHC3バルブエンジンの乗り心地は、洗練されていてとても現代的だ。
ラグジュアリーな雰囲気に仕上げるオプションパーツが多数用意されており、今回試乗した車両には、ラグジュアリーハンドグリップ(2万3544円)、レザーグラブレールカバー(1万584円)、ラグジュアリーサドル(6万480円)、クロームリアラック(2万4840円)、ブラウンレザーバッグ(5万2920円)が装着されている。
■2017年に復活!…ランブレッタ V125 Flex Fender model(本体価格40万円・税込み)
イタリア・イノチェンティ社の2輪ブランドとして1947年にスクーターの製造を開始して誕生したランブレッタは、イタリアンブランドながらも、イギリスのモッズカルチャーの象徴となったスクーターだ。ミラーでデコレートされた姿を目にしたことがある人も多いのではないだろうか。
1971年にイアリアでの生産が終了してしまったが、2017年に復活を遂げ、日本でも本格的に楽しめるようになった。
現代に蘇ったランブレッタは、伝統的なスチールモノコックボディを採用し、剛性感と高級感を兼ね合わせた質感を見事に再現しし、クラシカルながらもエッジの効いたスタイリングが唯一無二の存在感を放っている。そして、スクーターとはいえ、バイクらしい元気のよさを持っているのもランブレッタならでは。剛性が高いボディと硬めにセッティングされた足周りで、ちょっとスポーティな走りも楽しめる。
こちらもオプションでフロントキャリア(2万2336円~)やメータースクリーン(1万6747円~)などが用意されている。
LEDライトやUSB装備で性能は現代的に
ヨーロピアンスクーターとはいえ背景も個性もさまざま。クラシカルな装いをしていても、USBが装備されていたりライトはLEDだったりと性能はもちろん現代的。125ccという排気量は、クルマに乗るまでもない時の足としても最適だ。
ヘリテージ感漂うスクーターに乗っていると、急ぐことを忘れてしまうだろう。今日はどんなスタイルで乗りこなそうか? なんて洋服を選ぶのも楽しみになって来るはずだ。
速さではなくスタイルで選ぶ。そんな所有感を満足させる、ライフスタイルに寄り添った選び方こそが、ヨーロピアンスクーターには相応しいのだ。
《サトウマキ》
引用元:
https://response.jp/article/2018/12/20/317372.html
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