125cc免許が最短2日間で取得できるようになる。そんなニュースで今、にぎわいを見せているのが125ccスクーターだ。道交法の改正では、「普通二輪免許(小型限定)」のAT限定を対象に、1日に受講できる教習時間を最大4時限(従来は1日2時限)とすることで従来の最短3日間から2日間へと短縮されるのだ。つまり週末の土日だけを使って125cc免許が取得できてしまうということ。30km/hの速度制限や、二段階右折のあるいわゆる50cc原付バイクと比べ、生活のアシとしてより便利な125ccに手軽に乗ることができるのは嬉しい。
※教習所によってプログラムや受入体制が異なるため、対応しない場合もある。また、対象となるのは普通免許取得者の場合に限るほか、免許センターなどでの免許の交付にかかる時間は別となるので注意。
注目の125ccスクーター企画第一弾として今回は、ネオレトロの味わいを感じさせる上品な大人のスクーター『プジョー DJANGO(ジャンゴ)』を紹介しよう。
思わず声を掛けたくなるデザイン
シックで高級感あふれるスタイルが、街を歩く人からも目を惹いている。プジョー「DJANGO 125S ABS」だ。撮影していると、テーラードジャケットをオシャレに着こなしたジェントルマンが、「これは何ですか?」と問いかけてきた。
クラッチバッグを小脇に抱え、マットブラック一色の車体をジーッと見つめる紳士に「プジョーです」と答えると、「やはりそうですか」とライオンマークのエンブレムを確認し、大きく頷く。
独り言なのか、こちらにも聞こえるように「バイクは大きいのが1台あるんだけど、これなら街乗りにもちょうどいいや」と、言っている。
「どこで売っているのかな……!?」と首を捻ったから、「赤坂にショールームがありますよ」と教えると「ありがとう、行ってみようと思う」と、手を振ってまた歩き出した。
すると、振り返ってまたひと言。
「うん、後ろ姿もいい!」
そう言い残して、街を颯爽と歩くファッショニスタはいなくなった。あんな人が乗ったら、きっとよく似合うだろう。
バイクでも輝かしい歴史あるプジョー
そもそも「プジョー」といえば、フランスの四輪メーカーとして日本では広く認知されているが、1899年にモーターサイクルを発売し、1907年には「マン島ツーリストトロフィ」で勝利。1914年には二輪での世界最高速記録を122.49km/hで樹立したほか、30年代にはボルドールでの耐久レースなどで栄冠を手にしている。
プジョー初のスクーター『S55』は1953年に登場し、フルパネルされたボディやトランクを前面に備えた姿は四輪の『プジョー203』をイメージせずにはいられなかった。
そして現代に、その『S55』にインスパイアを受けて復活した新しいスクーターがジャンゴだ。伝統あるライオンブランドの歴史を体現するネオレトロスクーターは、全4機種を設定。今回乗った「ジャンゴ 125S ABS」は、1953年ボルドール、そしてル・マンでの伝説的な勝利の栄光へのリスペクトを示したスポーティなモデルとなっていて、車体サイドには“S”が誇らしげにあしらわれている。
丸みを帯びた曲線基調の車体は125ccにしては大柄で、マットブラックの車体はクラスを超えた上質感が漂う。スクーターといえば未塗装の樹脂カバーが至るところに使われているものだが、ジャンゴは隅々に至るまでペイントされ、メッキパーツが黒い車体の中でアクセントとなって、これまた高級感がある。
目を見張るのは12インチの前後ホイールで、凝った造形はさすが芸術の国フランス! 前輪右側のABSセンサーもまたデザインの一部のようであり、後輪を覗き込めばクロームカバーにライオンのマークが彫り込まれていて、足もとからしてオシャレ、エレガントとしか言いようがない。
ついつい触ってみたくなるタックロール調のシートは、クッション厚にボリュームがあって、座り心地も申し分ないもの。標準のタンデムシートと、よりスタイリッシュなシングルシートカバーが用意されているから、好みによって選べばいい。
さらに「上品だなぁ」と感じるのは、フロントまわりの収納スペースがポケットではなく、リッド付きのグローブボックスになっていて、右側はスマートフォンを立てて置けるホルダーまで設置されているところ。すぐ上にはDC12Vソケットもあり、USBに変換すれば充電もできて機能的。左側を空けると給油口が出てきて、これまた可愛らしい。メイントランクはシート下にあり、ヘルメット1個とレインウェアなどを入れておけそうだ。
走りは穏やか。その世界観に酔いしれる
樽型グリップを握って走り出し、まず感じるのは乗り心地も落ち着いていて上質だということ。空冷125ccエンジンは加速も充分に力強く、街乗りも軽快にキビキビ走る。ABS付きという安心感も心に余裕をもたらし、都会を駆け抜けるのが、いつも以上に気持ちがいい。
メーターは外周を指針式の速度計とし、中央に液晶ディスプレイを内蔵。信号待ちで眺めていると、つい恍惚として見入ってしまいそう。聞こえる排気音も歯切れが良く、「ジェントルに、ノンビリ行こう」と穏やかな気持ちにさせてくれる。
心はもう、シャンゼリゼを流しているかのような夢心地。乗り物が変わると、見える景色も違ってくるのかもしれない。ジャンゴに乗ると、そう思えてならないのだ。
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。 |
《青木タカオ》
引用元:
https://response.jp/article/2018/07/26/312351.html