イタリアンバイクデザインの父
本日のAIDEA STYLEは、バイクにおけるイタリアンデザインのお話し。偉大なる二人のデザイナーをご紹介します。
まずは、この人抜きには近代のバイクデザインは語れない、という「マッシモ・タンブリーニ」です。
イタリア・リミニ出身のタンブリー二は、1966年にヴァレリオ・ビアンキ、ジュゼッペ・モーリとともに「ビモータ」を設立。当初は空調設備の会社でしたが、バイクマニアであったタンブリーニが1973年より「ビモータ・メカニカ」としてバイクのフレームビルダー業務を開始しました。
日本製の高性能なエンジンを独自に設計した車体に搭載したビモータのスポーツバイクは、その性能の高さはもちろん、オリジナリティ溢れる美しさで世界中のバイクファンに絶賛されました。
その後タンブリーニは、1983年にカジバ社へ移籍。同社の擁するブランドから、数々の名車を生み出しました。
最も有名なモデルが、1994年にデビューし、その後のバイクデザインの常識を変えてしまったとも言われる「ドゥカティ 916」。4気筒エンジンが全盛の日本車と比べ、L型2気筒ならではのスリムさを活かしたセクシーなデザインが衝撃的でした。
こちらは、レースマシンのサスセッティングを行うタンブリーニ。外観をデザインするだけでなく、車両全体を知り尽くした、優れたエンジニアでもありました。
そしてタンブリーニのライフワークが、走る宝石と称賛される「MVアグスタ F4」。幅の広い4気筒エンジンを搭載していますが、タンク下のスリムさは2気筒モデル並み。ダイナミックな抑揚のある芸術的なデザインです。
これらの名車が生み出された場所は、タンブリーニが責任者を務めたカジバ社のデザイン統括部門である「CRC(カジバリサーチセンター)」。
そこには、多くのデザイナーたちが在籍し、タンブリーニの技を盗みつつ、イタリアンデザインを学んでいたのです。
受け継がれる「技」
CRCに在籍してタンブリーニからデザインを学び、後にその才能を開花させたデザイナーの一人が、南アフリカ出身の「ピエール・テルブランチ」です。
テルブランチの名が広く世に知られたきっかけが、1998年の作品「ドゥカティMH900e」。
ネオレトロの一言では語れない伝統と先進を繊細に調和させたデザインは、タンブリーニの技を受け継ぎながらも新境地を切り拓いた、テルブランチならではの世界と言えるでしょう。
その後も彼はドゥカティにおいて、999、Multistrada、Hypermotardなど、優れたデザインのモデルを次々と発表し、トップデザイナーとして、その地位を不動のものとしました。
しかし、そのポジションに安住することなく2007年にはドゥカティを離れ、モトグッツィ、ノートン、コンフェデレート、ロイヤルエンフィールド、とさまざまなメーカーのデザインを手がけます。
そしてテルブランチの最新作として、昨年のEICMA(イタリア・ミラノショー)で突如発表されたのが、BST社の電動バイク「HyperTEK」。
テルブランチ「らしさ」は各所に感じられるものの、エンジンを持たない電動バイクならではのシンプルさを最大限に活かした斬新なデザインです。
後ろから見ると、エンジン車ではありえない大胆な抑揚の造形が良く分かりますね。
タンク(にあたる部品)の「くびれ」にタンブリーニデザインの面影が見て取れます。
タンブリーニもテルブランチも、一つのメーカーという枠にとどまることなく、さまざまなメーカーの仕事を請け負いながら、理想のカタチを追求してきました。
そんなこだわりが、イタリアンデザインの素晴らしさのヒミツなのかもしれません。
バイクのデザインは、EVでさらに進化する!
近代におけるバイクデザインの源流は、やはりイタリアにあり、その流れを汲んだ作品たちはほれぼれするほど美しいです。
しかし、今後モーターをパワーユニットとするEVが増えていくことで、これまでとは全く異なる「EVならではの新しいデザイン」が創造され、進化していくのではないかと思います。
ワクワクしますよね!
次回は、もう一人の重要なイタリアンデザイナー「クラウディオ・ザンキーニ」が創造したEVのお話です。
お楽しみに!